満足しているのは社長だけ。スタッフは我慢している。
ズレに気づかない会社から、静かに崩れていく。
「うちは大丈夫」と言う社長ほど危ない。
「うちのスタッフは何でも言ってくれる」
「雰囲気はいいし、不満もなさそうだよ」
そう言い切る社長ほど、現場では静かな不満が溜まっています。
この“認識のズレ”が、組織をじわじわと弱らせるのです。
スタッフが本音を言わない3つの理由
(1)「言っても変わらない」と思っている
提案しても形だけで終わる。
改善を伝えても一度きりで終わる。
そんな経験を繰り返すうちに、スタッフは「どうせ無駄」と感じ、沈黙します。
(2)「立場的に言えない」
特にケア業界では、人間関係や上下関係が密接です。
「悪く思われたくない」
「チームの和を乱したくない」
この“気遣い文化”が、本音を封じています。
(3)「感情を出すのが怖い」
真面目な人ほど、感情を出すことを「わがまま」と感じます。
だからこそ笑顔で「大丈夫です」と言いながら、心の中では「限界に近い」ことも少なくありません。
経営者の錯覚「問題がない=信頼されている」
経営者の多くは「何も言われない=満足している」と捉えます。
でも、スタッフにとって“何も言わない”は、「どうせ言っても変わらない」「リスクが高い」の裏返しです。
本音が出ない職場は、「平和」ではなく「停滞」です。
沈黙が続くと、やがて信頼が消える
スタッフは最初、不満を我慢します。
次に「諦め」に変わり、やがて「距離」になります。
距離ができると、報告が減り、感情の交流がなくなり、気づけば“感情の壁”ができている。
そしてある日突然、
「実は前から辞めようと思っていました」
この一言で全てが終わります。
経営者の「聞いてるつもり」が一番の落とし穴
多くの社長が、話を「聞いているつもり」になっています。
これでは、スタッフは“聞いてもらえた感覚”を持てません。
本音を話しても、結局何も変わらないなら、次からは“沈黙”を選びます。
社長が難しいなら、「第三者」に任せる勇気を。
ここが重要です。
社長に直接は言えない。
評価や関係性があるからこそ、正直になれない。
これは人間として自然な心理です。
社外のコンサルタントやファシリテーター、もしくは信頼できる第三者がスタッフと面談し、“匿名性のある本音”を引き出すのです。
第三者には「立場の圧力」がありません。
スタッフは、「正直に言っても大丈夫」と感じられる。
そして、その声を“経営者に届く形”に整えてくれます。
経営者は“自分で聞くこと”より、“本音が出る仕組みをつくる”ことに集中すべきです。
「本音を言える職場」は、仕組みでつくる
本音は求めても出てきません。
安心して話せる環境が整って、はじめて出てきます。
✔ 月1回の“声を聴くミーティング”
✔ 無記名アンケートの実施
✔ 外部インタビューの導入
こうした仕組みが、「この会社は本気で聞こうとしている」と伝わります。
「安心感のある社長」が一番強い
経営者が「全員から好かれよう」とする必要はありません。
ただし、「誰でも本音を言える社長」になる必要はあります。
そのためには、
✔ 怒らないことより、受け止めること
✔ 完璧であることより、正直であること
✔ 答えを出すより、理解すること
不満を恐れるな。沈黙を恐れろ。
不満の声はチャンスです。
それは“信頼の証”であり、“改善のタネ”です。
恐れるべきは、不満がないこと。
静かな職場ほど、危険です。
「問題ありません」は、最高の“危険信号”です。
経営者の心得
スタッフの本音を聞くことは、経営の“痛み”です。
でも、その痛みを受け止められる社長ほど、会社は強くなります。
経営者の仕事は、「本音を引き出す環境を整えること」
自分だけで難しいなら、第三者の力を借りることを恐れない。
それは弱さではなく、“経営力の高さ”です。
今回の記事まとめ
- スタッフの8割は建前で話している
- 経営者の8割はそれを本音だと思っている
- 「沈黙」は危険信号
- 「第三者インタビュー」は本音を引き出す有効な仕組み
- 経営者は“自分で聞く”より、“本音が出る環境”をつくる
信頼とは、“言える空気”を育てることです。
社長が耳を傾け、第三者が声を拾い、組織全体で“本音が循環する会社”をつくる。
その会社こそが、人が辞めず、人が育ち、未来が続く会社です。
