“ベテラン頼み”が未来を潰す。若手が育たない構造

ベテランに助けられているうちは、いつまでも弱者のまま

どの職場にもいる。
誰より早く動き、ミスが少なく、何でも知っている“ベテランスタッフ”。
その存在は確かにありがたい。
だが、もしあなたの会社がその人に過度に頼っているなら、それは未来を食いつぶす構造だ。
なぜなら、ベテランが支えているうちは、若手が「育つ理由」がないからだ。

目次

ベテランが優秀なほど、組織は弱くなる

「〇〇さんがいれば安心」
「〇〇さんが全部わかってるから大丈夫」
この言葉を耳にした時点で、あなたの会社はすでに危険信号だ。

なぜなら、安心が“依存”にすり替わっているからである。
人は「頼れる存在」がいると、考えることをやめる。

そして、現場はいつしかこうなる。

●若手が質問する前に、ベテランが動く
●新人が失敗する前に、ベテランが修正する
●会議でも、ベテランの意見が最終決定になる

こうして、「考えない若手」と「疲れきったベテラン」だけが残る。
これが、“未来が止まる職場”の典型的パターンだ。

ベテランが悪いのではない。“構造”が悪い。

多くの経営者は、「ベテランが若手を潰してる」と誤解する。
だが、真犯人はベテランではない。

“頼りっぱなしの構造”を放置している経営そのものだ。

ベテランに仕事が集中するのは、

●マニュアルが曖昧
●教える時間がない
●任せるより自分でやった方が早い
という日常の積み重ね。

つまり、ベテランが抱え込むのは「性格の問題」ではなく、職場の仕組み不全の結果なのである。

若手が育たないのは、“挑戦の余地”がないから

「うちの若手はやる気がない」
「すぐ辞める」
「受け身だ」

よく聞く言葉だが、本当だろうか?
実は、若手の多くは“やる気がない”のではなく、“やる余地がない”だけだ。

何かを提案しても、
「それは前にやって失敗した」
「今は忙しいからまた今度」
「それは〇〇さんに聞いて」
そう言われて、芽が摘まれている。

この繰り返しの中で、若手はこう学ぶ。

「言ってもムダ」
「任されないなら黙っておこう」

そして、“受け身の人材”が量産される。
その原因を作っているのは、現場のベテラン依存だ。

ベテランにしかできない仕事を“減らす勇気”

ベテランの価値は、「何でもできること」ではない。
むしろ、やらなくていい仕事を減らすことにある。

たとえば、

●記録入力を若手に任せる
●ルーティン業務をチームでローテーション化する
●ベテランの“暗黙知”を口頭ではなくメモで共有する

これだけで、ベテランの疲労は半減し、若手は“責任を持つ感覚”を得る。
ベテランが動くのを我慢する。
それが“次の世代を育てる第一歩”だ。

経営者の怠慢が「依存体質」を生む

多くの経営者が、無意識にこう考えている。
「ベテランがいるうちは大丈夫」
「今は回ってるから問題ない」

だが、それは“静かな崩壊”の始まりだ。
ベテランが辞めた瞬間、現場が止まり、引き継ぎが混乱し、クレームが増える。

そして、経営者はようやく気づく。
「あの人に全部頼ってたんだな」と。

経営とは、“今”を回すことではなく、“次”を作ることだ。

目の前の安定に安心していると、未来の崩壊を自ら呼び込む。

若手を育てるのに「セミナー」も「理論」もいらない

「どうやったら若手が育つんですか?」
よく聞かれる質問だ。
答えはシンプルだ。

“失敗させる時間”を与えること。

人は失敗を通してしか、責任を覚えない。
なのに、多くの現場ではベテランが失敗を先回りして防ぐ。
結果、若手は「怒られない安全圏」に閉じこもる。

だからこそ、経営者はこう言わなければならない。

「失敗していい。ただ、報告だけは必ずしてくれ。」

この一言で、若手は動き出す。
「正解を教える」のではなく、「やってみろ」と背中を押す。
これが、人材育成の本質だ。

「教える文化」より「引き出す文化」を作れ

多くの会社が「教育」に力を入れている。
でも、教えすぎると人は考えなくなる。
正確に言えば、“答えをもらうクセ”がつく。

だからこそ、これからの現場に必要なのは、「教える文化」ではなく「引き出す文化」。

「どう思う?」
「やってみたら?」

この二言を増やすだけで、若手の思考が動く。
質問されるたびに答えるのではなく、“考えさせる問い”を投げることが、ベテランの新しい役割だ。

ベテランが「レジェンド」から「壁」になる瞬間

悲しいが、どんな業界でも見かける。
“レジェンド化”したベテランが、いつの間にか若手の成長を止めている。

それは悪意ではない。
ただ、自分が築いてきたやり方を壊されたくないだけだ。

しかし、その保守性が組織の未来を閉ざす。
「昔からこうしてる」
「そのやり方は甘い」

そう言った瞬間、若手の情熱は消える。
ベテランが「自分が教える立場」から「次に譲る立場」に変わらない限り、組織は前に進まない。

“ベテラン頼み”の会社に未来はない

会社を潰すのは「人手不足」ではない。
“ベテランがいなくなった瞬間に崩れる構造”だ。

あなたの会社が本当に強くなるのは、ベテランが抜けても、笑って動ける時。
それは決して簡単ではないが、“少しの任せ方”と“少しの我慢”で誰にでもできる。

✔ 若手にミスをさせてみる
✔ ベテランが手を出す前に、5秒だけ待つ
✔ 経営者が「次の世代の顔」を意識して会話する

この3つをやるだけで、未来は動き出す。

今回の記事まとめ

  • ベテラン頼みは、安心ではなく“依存”。
  • 若手が育たないのは、挑戦の余地を奪っているから。
  • 教えるより、「考えさせる」「任せる」ことで成長は始まる。
  • ベテランの役割は、“守ること”から“譲ること”へ。
  • ベテランが手を放した瞬間、会社の未来は加速する。
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